パスコンパスの日記

何か色々作るのが好きです

【萌基板】からあげレモン防犯ブザーをClip Studio,Inkscape,Ki Cadで作る※PR有

こちら、からあげ帝国のアドベントカレンダーの12/18の記事になります。 「からあげ」というキーワードでみなさん思い思いの記事を投稿されていて楽しそうだったので思い切って参加してみました。

※2024/3/10刈谷マイクロメイカーフェアの取材と部品リストを追記しました。

qiita.com

からあげ帝国に関しては詳しくはからあげ先生の記事をご覧下さい。

karaage.hatenadiary.jp

何についての記事?

こちらの記事では「からあげにレモンをかけられそうになった時専用の防犯ブザーの萌基板」の作り方に関して書きます。 何を言っているのか分からないかもしれないですが、私もよく分からないので大丈夫です。

使用時のイメージは下記の様な感じです。

Xの投稿が見えないケースもある様なので画像も貼ります。

また、いきなり情報過多ですみませんがこちらはPCBGOGOさんからの協賛をいただいた記事になっております。初めてのアドベントカレンダー参加で初めての宣伝協力記事を書くという、私にとってだいぶチャレンジングな試みです*1

www.pcbgogo.jp

PCBGOGOさんの方では現在、新規登録者やクリスマスのキャンペーンも実施中の様です。こちらの記事を読んで萌基板(でなく普通の基板でもOK)を作りたくなった方は、ぜひ注文をご検討ください。かかる費用や納期についても記事の後半に書きました。

目次

きっかけ

先日、自分で描いているメカトロ工作のマンガ「めかとろろ」のキャラクタの絵をシルクやレジストを工夫して基板上に描くいわゆる「萌基板」を作成しました。

ありがたいことにX(Twitter)のフォロワーの約10%の数の方から反応いただきました*2。そのため、やり方の記事を書きたいと思っていました。 そんなタイミングで楽しそうなアドベントカレンダーが目に入り、申し込んでみたのがこの記事を書いたきっかけです。

ただ、この記事のやり方がベストという訳ではないと思います。方法自体はオーソドックスではありますが結構めんどくさくて、他にもツールや良い変換方法があると思うので実施される方はやり方の一つとして参考程度にご覧下さい。

環境

使ったソフトのバージョンは下記ですが、特に合わせなくても余程大丈夫ではないかと思います。特にクリスタでは特殊な機能は使ってません。また、今回使ったのは全てPCソフトです。

①Clip Studioで絵を描く

ソフトはクリスタでなくても良いです。ただレイヤーを分けられる方が楽だと思います。フリーソフトだとGimp等でしょうか。

ラフスケッチを描いてからざっくり4色位で色分けをします。 線画(シルク)、ベタ1(レジスト)、ベタ2(カッパー)、ベタ3(カッパー+レジスト)、(ベタ4(ベース))位のレイヤーを想定しておくとよいです。 それぞれこんな感じの色になります。

ベースは基本黄色になると思います。また、ベースは裏側のレジストの色が透けてしまうので場合によっては使わないという手もあると思います。

今回はこんな感じで描いてみました。

ラフスケッチ↓

線を整えてざっくり色付け↓

今回はベースの色は使わない方針としました。 色を付けてイメージができたら基板用のデータを用意します。 ここで重要なポイントは2点あります。

  • レジストはマスクなので色を塗りたい場所と塗りたくない場所を反転する必要がある

  • シルクはレジストがある場所でないと載らない

また、クリスタを使っている場合で他レイヤーの下に色が入ってしまった場合等は、「色域選択」をすると便利です。 レイヤーを丸々コピーしてバックアップを取ってから結合し、 「選択範囲(S)」→「色域選択」を選んで指定色を選ぶと選択範囲がその色のみになります。 シルクとカッパーはそのまま切り取ればデータができます。 レジストは少し厄介で、切り取った後に範囲を反転する必要があります。また上述の様にシルクの部分はマスクしてはいけません。 後は境界で色がなだらかに変わるブラシよりも0/1がくっきりしたドットペン等を選択した方が色分けはしやすいと思います。

用意したデータは下記になります。

シルク↓

レジストマスク↓

カッパー↓

次の工程のために塗り色は黒にしておいた方が良いです。それぞれpng等で出力しておきます。最初の案と少し変わって「!」が無くなっている理由は、吹き出しの中の「!」を寝かせたコンデンサとブザーで表現できないかと思いついたためです。他にも微調整しました。

Inkscapeベクターに変換する

次は用意したデータをKi Cadに読み込める形式に変換します。 画像には色のデータがマス目状に配置されたラスターデータとベクトルの線でできたベクターデータがあります。 今回のやり方ではKi Cadにベクター形式でデータを読み込みます。 フリーのInkscapeを使いますが、イラレ等ライセンスをお持ちで使い慣れているベクターデータを扱えるソフトがある方はそちらをお使いください。

「パス(P)」の中の「ビットマップをトレース(T)」を選択します。 パラメータを良い感じに調整します。 今回は色の量子化を選択して色数3にするとくっきり分けられそうです。

他にも「多重スキャン」の「明るさのステップ」を選んで「平滑化」と「スキャンを組み合わせる」のチェックを外すとうまくいくこともあります。この辺は試行錯誤が必要です。

そうするとベクターデータ(線を触って変形できる方)と元のラスターデータが重なるので ラスターデータの方は消しておきます。 また、サイズが元の意図したサイズになっているか確認しておきます。 下の図の様に、左のノードツールを選んだ時に制御点が選べるのがベクターデータです。

その後、Ctrl+Shift+Dを押して「ドキュメントの設定(D)」を開き、 「カスタムサイズ」の中の「ページサイズをコンテンツに合わせて変更(Z)...」を押して保存します。

それぞれ、シルク、レジストマスク、カッパーで同じ作業をします。

③Ki Cadで回路図を描く

こちらは調べれば色々情報が出てくると思うので端折ります。 誤ってスイッチを押してブザーが鳴りっぱなしになるのは嫌なので、今回はスーパーキャパシタ電荷を貯めてスイッチを押して発振機能付きのブザーに電流を流す回路にしてみました。

フットプリントを割り当てます。ちなみに届いてから気が付きましたが、コンデンサの正負の向きと自励ブザーのフットプリントのピッチを間違えました。時間がある場合は注文前に絶対一晩寝かせた方が良いです。*4

【初心者向け】おまけのエルチカサンプル回路

もし基板作りが初めてで、どんな回路を作って良いかわからない場合は、とりあえず電流制限抵抗とスイッチとLEDと電源の回路を作ると良いと思います。スイッチでLEDが光るだけでも楽しいものです。冒頭の基板ではスイッチをリードスイッチ(磁石に反応するスイッチ)にしています。参考にそちらの回路とフットプリントの割り当ても載せておきます。 スイッチ部と電源部は応用が効く様に2.54mmのスルーホールにしています。

④Ki Cadで絵を読み込む

PCB Editorの方から「ファイル(F)」→「インポート」→「グラフィックス…」

svgデータとレイヤーを選んでPCBエディタ上に読み込みます。位置は頑張って合わせます。

シルクは「F.Silkscreen」 レジストマスクは「F.Mask」 カッパーは「F.Cu」です。

外形や穴、配線の方法は調べると色々と出ると思うので省略します。1つポイントとしてしは、配線は背面側で完結できるときれいで良いです。もしくはあえて配線を表にして、それ自体をデザインに組み込むのもありだと思います。

3Dビューアーで見るとこんな感じになります。ここでうまくできていそうか確認しましょう。※色は設定で少しいじっています。

微妙にマスクが大きくて一部生基板が見えていますが、とりあえずこのまま進めることにしました。 後はお好きな基板製造メーカに注文できるデータに変換しましょう。 アドインを使うとアップロード用のZipファイルを一発で出力してくれるものがあります。 PCBGOGOさんもKiCadに専用のアドインがあり、実行すると注文サイトまで開いてくれるので便利です。

⑤実装

基板が届いたら部品を実装しましょう。前述の様にフットプリントを間違えたりしても向きを変えたり被膜線で繋いだり頑張ればなんとかなることもあります。今回は何とかなりました。

!マークの下の点をブザーに、上の棒をコンデンサにしようかと思ってフキダシの中に配置しましたが、ブザーが大きすぎて若干微妙なバランスです。秋月で売っている低い電圧に対応した自励ブザーで良さそうなのがこれだったので今回は細かいことは気にしないことにします。

⑥動作確認

いくつかコンデンサの充電具合と電圧を試しながら選定したところ、1000μFで充電池1.2Vで控えめに良い感じの音が出ました。「レモンかけてもいいけどあんまりかけないで欲しい…」みたいな感じでしょうか。 動作の様子です。

逆に「絶対に許さない」位の強い気持ちを表現したい場合は250Fのリチウムイオンキャパシタを3.8Vで充電してから使ってみましょう。数分警告音を鳴らし続けることができます。間違って押しっぱなしになった時に放電しきって音が消える様に考えた回路が全く役に立ちませんが、これで強い意志は相手に伝わると思います。基板に全く収まっていないコンデンサも迫力があります。

最後の動画のみバージョン↓

参考サイト等

こちらのサイトは非常に参考にさせていただきました。ありがとうございます。特にソルダーマスクが反転している必要があること等、こちらで読まなければ分からなかったと思います。

yuki-factory.main.jp

こちらの一連のポストも参考にさせていただきました。私の環境ではInkscapeのバージョンが違うためかsvg2shenzenのアドインはうまく動かなかったため、それぞれのレイヤーの読み込みは手動で行いました。

費用や納期に関して

基板作成の費用はやったことがないと見当がつかなくて気になるのではと思います。 今回の基板をPCBGOGOさんで作るのにかかる費用は下記になります。

  • 基板代5USD ※PCBGOGOロゴ有の場合は0USD
  • 送料20USD ※DHLで1-2日発送の場合
  • オプション1USD ※製造番号の非表示
  • クレジットカード手数料3USD(またはPaypal手数料2USD)

→合計29USD、約4,121円*5です。

やはり1-2日での発送となると対価として送料はちょっと高いですね。その分コンテスト等の〆切に向けて急ぎで作る時は助かると思います。 今回の基板は12/2の浜松マイクロメイカーフェアの後に基板設計をして発注というスケジュールでした。そのため、普通の便だと12/18に間に合わないかなと思っていたので助かりました。 今回はどうしても見た目にこだわりたくてレジストを赤色にしましたが、基板が見えない場合で急いでいる場合は緑が良いです。 緑の場合、24時間特急で特急料金が無料で作ってもらえます*6。 また、新規ユーザー割引のキャンペーンを使えばPCB費用1USD、送料0USDになる様ですので一度やってみるのはありかもしれません。
確認したところ、新規ユーザーキャンペーンが適用されない条件は下記の画像の赤字と赤枠内の条件とのことですのでご注意ください。 逆にそれ以外であれば大丈夫だと思います。

まとめ

レジストやカッパーを含めてイラストを表現する基板の作り方は以上になります。 アイディア次第でキャラクタを表現する以外にも活かせると思います。

申し込んだときはアイディアを閃く基板のスイッチ部にからあげ(磁石)をかざすと光る様にしてお茶を濁そうかと思っていましたが、 金属の箸でからあげをつまんだら光をつけられないか?マンガにできないか?ブザーの方が良いか?等と持ち前のサービス精神(?)で考えていたら 気が付いたら基板を新たに起こしていました。 記事にまとめることで改めてやり方を整理できて、NT山城に持っていく作品も増えたのでやってみて良かったです。

そういえばPCBGOGOさんではないですが、今後UVプリントのフルカラー印刷の基板のサービスが始まるメーカもある様な噂も聞きます。 そうなってしまうとこのやり方はレガシーになると思うので、今のうちにまとめられて良かったです。

読んで下さりありがとうございました。

追記

刈谷マイクロメイカーフェアというイベントで「からあげ帝国芸術部」として出展させていただきました。 展示で診断チャートっぽい説明パネルを新たに作りました。 どこにたどり着きますか?

TVとYahooニュース掲載

刈谷マイクロメイカーフェアでは、大変ありがたいことに中京テレビさんの方で取り上げていただきました。

また、Yahooニュースの地方欄?にも文字だけですが載せていただきました。

news.yahoo.co.jp

レモンジの正体が気になる方は、からあげ帝国のディスコードにご参加いただければ謎が解けると思います。

部品について

基板をお渡ししてから気が付いたのですが 部品の型番を載せていなかったのでそちら、追記します。 電子部品は秋月で買えます。

akizukidenshi.com

電子ブザー

注意点としては、ブザーではなくスピーカを使うと音が出ないことです。 必ず電圧をかけるだけで音が鳴るブザーをご使用ください。

  • 電子ブザー 24mm PKB24SPCH3601 販売コード 103958 ※ピンの幅が合わないので繋ぐ必要があります

  • 電子ブザー 12mm UDB-05LFPN 販売コード 109704 ※こちらでも動くかもしれません 今度買って確認します

コンデンサ

初期ロットは極性のシルクが逆になっています。ご注意ください。
絶対にレモンをかけてほしくない場合は、こちらを使ってください。数か月は電池無しでOKです。

控えめな主張をしたい場合はこちらを使用ください。

電池ボックス単4か単3

  • 電池ボックス 単3×2本 リード線・フタ・スイッチ付 販売コード 111523

もし組み立てていて、お困りのこと等あればご連絡ください。

*1:アドベントカレンダーにPR記事を投稿することに関して、主催のしげきさんと皇帝のからあげ先生には事前に確認し許可をいただいております。ありがとうございます!

*2:こちらの指標もからあげ先生の情報発信の本を参考にしました。ありがとうございます。

*3:これもこんなに古くなくて良いと思います。私が使っているレーザカッタで推奨のバージョンが古いためです。

*4:また、スイッチのピッチは微妙に違うことはわかっていましたが、フットプリントを作るより12/18に間に合わせることを優先して妥協しました。

*5:2023/12/17時点の為替レート

*6:他の色でも運が良ければ同タイミングで同色の注文と併せて3-4日かからずに作ってもらえるケースもあります。今回そうでした。