今回は透明基材の基板を作ってみましたのでそちらについての解説記事を書きます。
こちらはPCBGOGO様に協賛いただいた記事になります。 お時間ありましたら下のリンクから様子を見ていただけると記事が役に立ったことになるので大変ありがたいです。
経緯
基板上にイラストを描いた基板、2色レジストやUVプリントの基板等、少し変わった基板を作ってきましたが、より変わった基板を作ってみたくなりました。 そこでPCBGOGO様の方に透明の基材の基板が作れないかご相談したところ、作れるとのことで今回作っていただきました。 表面の方はUV印刷も実施しています。
回路の説明
M5StackCore2でシリアルサーボを動かすための基板です。 後述のペンプロッタで使用します。
回路は秋月電子のFEETECHサーボ STS3032の資料の回路をほぼそのまま参考にしました。直リンク禁止のため気になる方はすみませんが検索してみて下さい。 変更したところは5V対応のMAX485を3.3V対応のMAX3485に変更したことのみです。
また、サーボの機能以外にスイッチやLED、ポテンショメータを追加しています。
コネクタは下記の対応になっています。
- J1:ポテンショメータ1(1:信号線、2:電源、3:GND)
- J2:シリアルサーボ(1:信号線、2:6V、3:GND)
- J3:6V電源(1:6V、2:GND)
- J4:M5StackCore2
- J5:ポテンショメータ2(1:信号線、2:電源、3:GND)
- J6:スイッチ
※実体配線図の方でJ7がありますが、都合によりJ4を分離したものになります。
フットプリントです。 コンデンサとMAX3485のみ表面実装で後はスルーホールにしました。
UVプリント用イラスト
絵です。 今まで描いた絵に配線を合わせていましたが、 今回は一度Kicadから必要なレイヤーをSVGでエクスポートしてから絵を描きました。
[ファイル(F)]→[エクスポート]→[SVG...]
こちらはNANANAさんの記事を参考にしました。 ありがとうございます。 zenn.dev
今回はInkscapeでSVGを読み込みPNGとして吐き出し、 それをClip Studioで編集しました。 Inkscapeだけで慣れている方やイラストレータが使える方はそちらだけで問題ないと思います。
ドット絵の方はしばらく前にセールしていたAsepriteというソフトを使ってみました。
まだあまり使いこんでいませんがマウスでもドット絵が描きやすく アニメーションもできそうだったので今後時々使ってみたいと思います。 最終的なデータはこんな感じです。
今回は表面と裏面の配線の色を赤と青でわかりやすくしたかったのでsvgで出力する際に配線のレイヤーも出力しました。ただ半田をつける部分にはUV印刷がこない様に画像を調整しています。画像の背景はpngで透過にすることをおすすめします。透明基材でも白ベタの印刷をしてしまうと透明部分が見えません。
注文方法
kicadをお使いの場合はプラグインでガーバーデータをアップロードするのが手軽でおすすめです。
ただ今回は特殊な基板のため、普通にアップロードした後にコメントをつける必要があります。下はコメントの例です。
透明基材で作成したいです。また、透明のレジストでの処理をお願いします。表面のみUV印刷も実施したいです。
今回の様にUV印刷を実施したい場合は追加でpngファイル等画像データの添付も必要です。また、完成イメージの図があると齟齬が発生しづらいので余裕があれば作成することをおすすめします。今回は下記の様な完成イメージ図も添付しました。今回はUV印刷で依頼しましたが透明基板に対してシルク印刷での制作も可能とのことです。
こちらははんだ付けをする部分も含めた画像のため、実際に印刷する柄とは少し異なっています。印刷データとの取り違い防止のために※imageと注をつけました。
基板の様子
届いた基板の様子です。
表面です。
印刷が配線幅と同じデータで位置合わせがもしかすると難しいかなと思ったのですが、UV印刷の位置ずれは個人的には気にならないレベルだと思います。
裏面です。
背面の配線は銀色で表面の方は茶色っぽく見えます。面白いです。
透過の様子です。
ガラスの様に完全に透明とまではいきませんが、十分反対側が見えるレベルです。LED等光り物の作品と相性が良いと思います。
材質は「プラスチックの板」という感じで特に強度面で普通の基板との違いは感じられませんでした。 スペックを教えていただきましたが、ハロゲンフリーの材質でヤング率は24~26GPaで一般的なガラスエポキシのFR-4と遜色ない様です*1。
注意点(解決済み)
※※※こちらは解決済みの内容になりますが、NT金沢でのサンプル品に関しては 下記の説明が必要なため記載を残します。※※※
実は今回のサンプル品限定ですが、基板にレジストの層がないです。 代わりにUVコーティングをはんだづけが不要な位置に塗布いただく様に依頼しました。 絶縁としては問題ないとコメントいただいています。
ただ、こちらの写真の右の手前から2番目のピンの様にコーティングと銅箔の間にはんだが入り込み、 コーティングや印刷が浮いてしまうことがあります。写真のはんだ付けが下手なのはご容赦ください。
スルーホールの場合は、はんだパッドを独立させてあげれば、配線部にはんだが流れていかないのでコーティングは浮きずらいと思います。 表面実装の場合ははんだを流しすぎるとコーティングが浮く可能性があるので要注意です。
こちらについては透明なレジストを使う対策があり、 透明なレジストは現在発注中とのことで、今後制作される方は問題ないと思います。
動作の様子
今まで簡単なアナログ回路の基板ばかりを使っていたので正常に動くまでかなり苦しみました。 結果的にはシンプルなはんだ付け不良が原因でした。
サーボの動作の様子です。
今回作った透明基板でシリアルサーボが動いた!!!!
— パスコンパス (@pscmps) June 15, 2024
数日悩んでたけど、回路は合っててめちゃくちゃただのはんだ付け不良だった!
これで後はcores3からcore2へのプログラムの再移植と紙送りロール周りと入力インターフェース周りができればOK!!#マウザーアワード pic.twitter.com/LmrolAuMIq
透明を活かして背面を光らせるとこんな感じです。
PCBGOGOさんに協賛いただいた透明の基材の基板の後ろにLEDを配置して光らせてみました
— パスコンパス (@pscmps) June 16, 2024
結構良い感じな気がします#マウザーアワード に向けて作っているペンプロッタのシリアルサーボを動かす基板です
今度の #NT金沢 にも持って行きます
基板の解説の記事も近々公開予定です#pr #pcbgogo pic.twitter.com/x6HMvHH1TM
X(旧Twitter)が見られないケースがある様ですので画像でも貼っておきます。
光っている時↓
光っていない時↓
ペンプロッタに関して
本筋とそれるので詳細はリンク先を見ていただけたらと思いますが、 この基板はマウザーアワードというコンテストに向けて作っているペンプロッタの作品で使用するための基板です。
費用に関して(現状不透明) ※情報更新次第追記予定
1番気になるのはここではないでしょうか。 ただ申し訳ないのですが今回PCBGOGO様としても初チャレンジで 基材在庫もなくお取り寄せいただいた材料とのことで実際の注文での料金はまだ未定とのことでした。
注文枚数が増えると単価は下がると思います。また、おそらく需要が多く透明基材の在庫が定常的にある状態となる場合、 値段が下がる可能性もあるかと思います。こちらの方は情報アップデートがありましたら追記します。
まとめ
今回、透明基材でシリアルサーボを動かしてLEDを光らせてみました。透明の基材でも問題なく回路として動くことが確認できたと思います。 ご興味のある方はぜひPCBGOGO様の方で注文してみてはいかがでしょうか。
再掲となりますが、こちら↓のリンクを踏んでチラッと様子を見ていただくと私の記事がPRに貢献できたことになり、ありがたいです(ダイレクトマーケティング)。
注文はAll日本語でOKで新規の方には1USDで送料無料のキャンペーンも実施中の様です。 基板製作をしたことがない方はnomolkさんの記事が解説が丁寧でしたので参考になると思います。
そしてここまで読んで下さった方に朗報(?)です。数に限りがありますが、今回の透明基板のサンプルを6/22,23のNT金沢というものづくりイベントにて無料で配布しようと思います。 私か私のブースに来てこちらのブログの記事を見せていただいて透明基板がほしい旨をコメントいただけましたら先着順でお渡しします。 一日でなくなってしまうと申し訳ないので二日に分けようと思います。G-1でお待ちしています。
ただ先述した様に金属面の上に直接コーティングされたトライアルの基板ですのでそちらはご了承ください。
今回は背面でLEDを光らせただけでしたが次の記事ではより透明の要素を活かした作品を作りたいと思っています。 読んで下さりありがとうございました!